SPIRITUALITY IN SCIENCE
第5回 重力が見せる「あちら側」の世界
スピに造詣が深い物理学者の周藤丞治さんが、高次の世界についてやさしく解説してくれる本連載。
今回は、物質世界を超えた「あちら側」の世界に、物理学が初めて触れた瞬間についてお話しいただきます。それを発見したのは、日本人の湯川秀樹であり、ノーベル賞以上に価値のある歴史的偉業かもしれません。
文◎周藤丞治さん 構成◎編集部
粒子はキャッチボールしている
前々回はニュートン、前回はアインシュタインが発見した、重力の性質についてお話ししてきました。重力は、天上と地上の世界をつなぎ、また時間と空間をつつみ込んでいるのでした。今回はいよいよ、重力を通して物質世界を超えた世界が垣間見える、というお話をしたいと思います。
これを発見したのは、1949年に日本人初のノーベル物理学賞を受賞した、湯川秀樹でした。湯川秀樹がノーベル賞を受賞した理論は「中間子論」と呼ばれますが、土台となる考え方は次のようなものでした。
物質を作る粒子(物質粒子)はキャッチボールをして、おたがいに力を伝え合っている。そのボールも粒子であり、力を伝える粒子として働いている。(図1 )

当時は新しい仮説でしたが、いまや物理学の基礎である「素粒子の標準模型」という理論の、土台として位置づけられています。これまで行なわれてきた素粒子の実験において、物質粒子の間に働く力の大きさを、すべて正確に計算できることがわかったからです。
しかし、これにはひとつだけ例外があります。それが重力です。重力を伝える粒子(重力子)も同じように、物質粒子がキャッチボールしていると考えると、なぜか重力の大きさが正しく計算できません。計算結果がすべて無限大になってしまい、実験結果とまったく合わないのです。
物質世界を超えた世界がある
こうした重力の問題に対して、初めて真正面から取り組んだのも湯川秀樹でした。素粒子の標準模型では、粒子は大きさが無視できる「点」のようなものだと考えます。彼はそこに間違いがあると見抜いたのでした。
「点の粒子はテンでだめ」と言って、粒子は広がりを持っていると考えたのです。そして、粒子が広がることのできる極小の領域(素領域)が、時間と空間の中で無数の泡のように存在していると提案しました。
1966年に提唱されたこの理論は、「素領域理論」といいます。(図2 )素領域の外には、いかなる粒子も存在しません。素領域や粒子の存在を支える世界であると考えられます。この素領域の外のことを、湯川秀樹の弟子で素領域理論の研究者である保江邦夫氏は、「あちら側」の世界と呼んでいるそうです。物質世界(こちら側)を超えた世界に、物理学が初めて触れた瞬間であったと、私は認識しています。
その後、1984年に提唱された超ひも理論でも、粒子は広がりを持っていると考えられ、物質世界を超えた高次元世界が描き出されました。物質を超えた、精神や生命の世界。
すなわち、霊的存在や神々の世界。素領域理論も超ひも理論も、表現の仕方は異なりますが、そうした
世界を描いていると期待できるのです。


物理学者
周藤丞治さん
Profile
すとうじょうじ◎高次元世界の存在たちとの交流や、科学者、哲学者、宗教者、経営者たちとの分野を超えた対話から得られてきた、大宇宙に関する理解や新しい文明構築のヒントを、関
心ある方々に向けて発信するために活動している。著書『いざ高次元世界へ』『9次元からの招待状』(ともに、きれい・ねっと)。
※当連載記事は、2023年10月号に掲載した記事を一部改定し、転載したものになります。