SPIRITUALITY IN SCIENCE
第6回 重力がひもとくワンネスの世界
スピリチュアルと科学の深いつながりについて、物理学者の周藤丞治さんがやさしく解説してくれる本連載。今回は、ニュートンやアインシュタイン、湯川秀樹といった偉大な物理学者たちが見出した重力の性質を通して、超ひも理論についてお話しいただきます。そこで見られる現象はワンネスそのものであり、自我をも表しているのです。
文◎周藤丞治さん 構成◎編集部
開いたひもと閉じたひも
皆さま、こんにちは。周藤丞治です。前回までに、物理学が物質世界を超えた世界を垣間見るに至った歴史をご紹介しました。第1回でお話しした、高次元世界の物理学である超ひも理論は、こうした歴史の上に築かれたものなのです。
今回は、重力の性質を通して、改めて超ひも理論を眺めてみたいと思います。超ひも理論では、粒子は「ひも」のような形をしていると考えます。湯川秀樹が粒子は広がりを持っているはずだと考えたように、ひもには広がりがあって、波動を持って揺らぐことができます。
ひもの形には、端が切れている(開いた)ひもと、端が結ばれて輪っかになっている(閉じた)ひもの、2種類があります(図1 )。このうち、閉じたひもが持つ波動を調べると、アインシュタインが描
いた重力子(重力を伝える粒子)と同じふるまいをすることがわかるのです。
1970年代に日本人物理学者の米谷民明氏が発見しました(同時期に、フランスの物理学者シャー
クとアメリカの物理学者シュワルツも発見しています)。一方、開いたひもが持つ波動は、重力以外の力(電磁気力と原子力)を伝える粒子と同じふるまいをします。
さらに、第2回でご紹介した超対称性を組み込んだ「超ひも」を考えると、物質粒子と同じふるまい
をするひもも現れます。このように、すべての種類の粒子は開いたひもと閉じたひもで表現できると考えるのが、超ひも理論なのです。
閉じたひもはワンネスの世界にいる
開いたひもと閉じたひもは、ふるまいに大きな違いがあります。閉じたひもは自由に飛び回ることができますが、開いたひもは端があるため、その端をどこかにくっつけていないと安定して存在できません(図2 )。
いってみれば、開いたひもには「他者」が必要なのです。もし他者が複数いれば、誰に自分の端をくっつけるかを決めるときに、他者に優先順位をつけます。これは自我が生じるプロセスとよく似ていますね。
一方、閉じたひもは他者を必要としません。自分を1ヵ所切れば、開いたひもになれます。開いたひもが端をくっつける「他者」も、じつは閉じたひもがたくさん集まってできています。自分と他者という区別がなく、世界には自分しかいない。閉じたひも(重力子)はまさに、ワンネスの世界を見ているのです。
このように、超ひも理論にはワンネスの世界と自我の世界が描かれていると、私は解釈しています。さらに、超ひも理論が面白いのは、これらの世界の次元が物理学で計算できてしまうのです。次回は、超ひも理論における次元の数え方について、スピリチュアルな立場からお話ししてみたいと思います。
物理学者
周藤丞治さん
Profile
すとうじょうじ◎高次元世界の存在たちとの交流や、科学者、哲学者、宗教者、経営者たちとの分野を超えた対話から得られてきた、大宇宙に関する理解や新しい文明構築のヒントを、関
心ある方々に向けて発信するために活動している。著書『いざ高次元世界へ』『9次元からの招待状』(ともに、きれい・ねっと)。
※当連載記事は、2023年11月号に掲載した記事を一部改定し、転載したものになります。